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終戦記念特別レポート3 ~被爆者として生きる~

今年5月27日、オバマ大統領が現職米国大統領としては初めて、被爆地を訪問した。歴史的に重要な意味を持つ今回の訪問を受けて、広島の原爆体験をもとに語り部として核廃絶を訴え続ける花垣ルミさんに、現在の思いを綴ってもらった。

核兵器はその一瞬だけでなく、その後の人生に苦しみをもたらす
~被爆者として生きる~

寄稿:花垣ルミ

花垣ルミさん
5歳の時、広島の爆心地から1.7キロの地点で被爆。避難の途中で見た光景のあまりの酷さに当時の記憶をなくす。58年後に失われていた記憶がよみがえり、その悲惨な歴史をくり返してほしくないとの思いから、京都原水爆被災者懇談会語り部の活動を始める。2000年代にニューヨークで行われた NPT(核不拡散条約)再検討会議に3度参加。現在も国内各地で講演などを行っている。京都市在住。

オバマ大統領の広島訪問は大変決断のいったことだったと思うが、勇気を出してよく来ていただいたと敬意を表したい。きっと、彼の個人の思いが強く議会をも動かしたのであろう。彼のプラハの演説は実にまっすぐで響いたものだった。シンプルな英語でよくあれだけの表現ができたものだと感心する。強い思いがあったのだと思う。ただ、被災者としていうなれば、核廃絶に関し彼が「自分の生きているうちは無理だろう」というのではなく、せめて年数を切って伝えて欲しかった。見通しが欲しかった。なぜなら、私たち被爆者はその時、誰一人生きていないから。生きているうちに見届けたい。

原爆を投下したアメリカやアメリカ人がキライなのではなく、伝えたいのは戦争は絶対してはいけないということ。これは、私の母の言葉だ。
母は原爆の後遺症で3回入院したが、その際、隣のベットに韓国なまりの日本語を話す女性が入院してきた。母に食べ物の差し入れをしていた私は、ある日、1つ余分に持っていき、その婦人に差し入れた。するとその婦人は急に大きな声で「私は日本人に恵んでもらおうと思って日本にいるわけではない」と怒鳴りだした。「日本人が勝手に夫を兵隊にして連れていき、夫は戦死した」。私はただびっくりして何が起こったか理解できなかった。彼女の日系2世の娘が「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝ってくれた。
次の日、女性は私に「昨日はごめんなさい。あなたたち、原爆にあったのね。ごめんなさい。無事で良かったですね」と謝ったり、慰めもしてくださった。昨日、母が被爆者であることを話したとのことだった。

原爆は一瞬にしてヒロシマ、ナガサキ合わせて20万人の命を奪った。原爆は遺伝子が影響を受け、世代を超えて、世紀をまたがって被害が遺伝していく。また、戦争による大空襲、例えば東京大空襲でも10万人が亡くなったが、人々が逃げ惑う地獄絵は残酷極まりないものだった。何度も言うが、戦争は絶対にしてはいけない。

さて、オバマ大統領も潘基文国際連合事務総長も今期で退任だ。このお二人は核兵器問題廃絶に向けて動いてくださっていたので、この先の後継者にも、しっかり意思をついで欲しいと思う。20世紀は「戦争の激化」だったが、21世紀は「人類の平和への激化」でありたいと願う。

シアトルで開催される
核兵器のない平和な世界を目指すイベント

紙芝居『おばあちゃんの人形』
(※紙芝居の裏に英語字幕付き。)

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映画『アオギリにたくして』

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ピースウォーク
Pacific Northwest Interfaith Peace Walk

pacific-northwest-interfaith-peace-walks-min 2005年から毎年オレゴン州とワシントン州で開催されている核兵器廃絶を目指した宗教合同(仏教、キリスト教、イスラム教等)ウォーキングイベント。主催者の1人、日本山妙法寺の金枝宣治師は、ベインブリッジアイランドの寺院の僧侶。「世界で唯一原爆の恐ろしさを体験している日本人として、原爆を持つことも作ることも使うことも廃絶してほしい」と語る。
www.gzcenter.org/tag/interfaith-peace-walk

ヒロシマから希望へ
From Hiroshima to Hope

hiroshima-to-hope-1-copys-min 原爆や戦争の犠牲者の冥福を祈り、核兵器のない平和な世界を願うイベント。1984年から毎年8月6日に開催されている。グリーンレイクの会場内にはステージが設けられ、詩の朗読、スピーチ、太鼓の演奏、舞踊などのパフォーマンスが行われる。日没後、メッセージが書かれた灯篭に火を灯し、湖に流す。参加者からは「神秘的で美しく、平和のシンボルとして最適」、「アメリカは少しずつ核兵器の数を減らしていくことから始めないといけない」という声が寄せられた。
fromhiroshimatohope.org