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麻葉の見たアーミッシュの世界 ~第1回~

10年前からアーミッシュ文化について調べている筆者が、2度にわたってペンシルヴァニア州、オハイオ州のアーミッシュ・コミュニティーで暮らした体験を、今回から数回にわたって紹介する。
寄稿・写真 吉田麻葉

テクノロジーに頼らないアーミッシュの生活

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バギーが日常の交通手段

車、パソコン、スマートフォン、エアコン……。私たちは便利な製品に囲まれて暮らしていますが、これらの文明の利器に頼らず昔ながらの生活を維持している人たちがいます。車を持たず馬車で移動をし、テレビや電話は家になく、畑を耕し家畜を飼う生活を送る人たちです。彼らは「アーミッシュ」 と呼ばれるキリスト教の一派で、全米30州とカナダの一部に、30万人が暮らしています。アメリカのテレビ番組『Breaking Amish』 や映画『刑事ジョン・ブック 目撃者』 で彼らの生活を見たことがある方もいるかもしれません。

私は10年前からアーミッシュの文化を調べ続けていて、これまで2回彼らのコミュニティーに滞在しました。アーミッシュのとある家庭に滞在し、家事を手伝ったり、食事を一緒に食べたり、買い物に行ったり、折り紙を教えたり――。閉鎖された村社会を形成し、外部からの接触を歓迎しないと思われがちなアーミッシュですが、実際は他のアメリカ人と同様、フレンドリーで親切な人たちです。道ですれ違えば挨拶をしてくれるし、彼らの生活について質問すれば快く教えてくれる。おかげでたくさんの事を学ばせてもらいました。

アーミッシュの肝っ玉母さん

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アーミッシュの洗濯物風景

私が滞在したアーミッシュの家庭は、10人の子どもがいる大家族。と言っても、彼らは平均7人の子どもを育てますから、アーミッシュの家庭としては珍しくない数。お母さんは子どもの世話をしながら家事をこなすので、文字通り 「超」 忙しいです。

ある日、お母さんが子どもを抱えながら器用に料理を作っていました。私が思わず「よくそんなことできるね」と声を掛けたところ、「10人も子どもを産むと、大抵のことは同時にできるようになるのよ」 という返事。

頼もしいのはお母さんだけでなく子どもたちも。アーミッシュの文化を学んでいるという私に、小さい子が色々なことを教えてくれました。お母さんの「Keep her entertained.(彼女を楽しませてあげてね)」という指示のもと、納屋を案内して家畜の説明をしてくれたり、聖書の絵本を見せてくれたり、馬に乗せてくれたり、部屋を見せてくれたり――。6歳や8歳の女の子が私に気を遣いながら、家中を案内してくれる姿にとても驚きました。子どもってこんなにしっかりしているものでしょうか?

大人びているアーミッシュの子どもたち

家事を自分の役割として手伝う子どもたち風景
家事を自分の役割として手伝う子どもたち風景

アーミッシュの子育て方法は一部で注目されており、 本も出版されています。子どもは小さいときから親に従うことの重要性をしっかり教えられるので、お母さんの言うことを素直に聞いてその通り行動するようになります。5歳くらいから家畜の世話や皿洗いなど、簡単な家の手伝いをし始めます。私が滞在した家庭でも、皿洗いは6歳と8歳の姉妹の仕事でした。夕食後にお母さんが「お皿洗いよろしくね」というと、 姉妹は面倒くさがりながらもお皿を洗い始めるのです。他の兄弟も納屋の掃除や馬の世話など担当の仕事を持っており、家族の中の役割分担がはっきりしています。子どもたちは、自分が自分の役割を果たすことで家庭が成り立っていることを学び、家族の一員としての自覚を持つようです。一度皿洗いを手伝ったことがありましたが、姉妹から「私たちの仕事を手伝ってくれてありがとう」と丁寧にお礼を言われました。滞在中はこの姉妹の大人びたふるまいと礼儀正しさに、始終驚かされてばかりでした。

地に足が着いたアーミッシュの暮らし

20160101_amish4-min 2週間の滞在中に驚いたのは子育て方法だけではありませんでした。次回から数回にわたって、アーミッシュがウォルマートでどのような買い物をするか、何を食べているのか、どういうときに車に乗ることが許されるのかなど、アーミッシュの日常について私が目撃したことをご紹介したいと思います。

[麻葉アーミッシュの世界]