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ワンオペ育児のママに知って欲しい、子どもが5分で笑顔になる方法

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

ワンオペ育児のママに知って欲しい、子どもが5分で笑顔になる方法

秋も深まり、シアトルらしい雨模様の天気が続いていますね。この時期、外遊びもだんだん減ってきて、子どもとふたりきりで家の中にこもっているママたちも多いのではないでしょうか。イライラしてつい子どもに余計に怒ってしまうというママたちの悩みもよく聞きます。ねんねのころはママ自身が産後でまだ体の調子が万全ではなかったり、子どもが歩 けるようになると後追いやイヤイヤ期があったり、子どもが小さいうちは本当に大変なことばかりですよね。1日の終わり、家事や子育てでクタクタになって子どもから少しでも解放されたいと思っても、夫は帰りが遅かったり育児に協力的 ではなかったりすると、余計にストレスがたまります。

そこで、これからの季節に子どもと楽しく過ごすためのシンプルな方法をお伝えしたいと思います。それが、たった5分間の「スペシャル・プレイタイム」です。毎日5分間だけでいい ので、ママがそばにいて、子どもの好きな遊びを思いっきり遊 ばせるというもの。ただし、ルールがあります。それは、「ほめる」、「まねる」、「描写する」、「楽しむ」ことーーつまり、子どもがやっていることをまねながら、ポジティブな声がけをしてママ自身も心から楽しんで欲しいのです。それぞれについて、コツを説明しましょう。

まず、「ほめる」のが意外と難しいかもしれません。たとえば 「レゴが上手だね」といったほめ言葉より、もっと具体的に「レゴで上手におうちを作ったね」とほめること。そうすると、子どもは自分のやった行動の何が良かったのかがわかるので、ものすごく喜びます。最初はなかなか大変ですが、慣れてくるとだんだん自然にできるようになると思います。

2つ目の「まねる」。これには「言葉をまねる」と「行動をまねる」の2種類があります。言葉の模倣は、たとえば子どもがままごとをしていて「おりょうり、ジュージュー」と言ったら、自分も「お料理、ジュージュー」と言います。やり過ぎると「ママ、 なんでまねするの?」と言われて苦笑するときもありますが、 子どもは自分の言ったことをママが聞いてくれているとわかって安心します。行動の模倣は文字通り、子どもが積み木を積み上げていたら自分も同じように積み上げてみるなど、子どものする通りの行動をしてみます。

3つ目の「描写する」は、子どもの行動をスポーツの実況中継のように描写すること。「積み木を高く積み上げているね」、「四角い積み木を置いたね」など、ニュースキャスターになったつもりで語りかけてくださいね。その後にほめ言葉をつけて「上手に高く積み上げたね」と言えるようになったらもうバッチリです。

最後の「楽しむ」ですが、ママ自身もぜひ一緒に心の底から楽しんでください。たった5分間だけなので簡単と思いがちですが、タイマーで計ってやってみると最初はかなり長く感じて、終わるとどっと疲れるものです。でも、毎日続けると慣れてきて自然にできるようになりますし、何より子どもが本当に喜んでくれます。

さて、この「スペシャル・プレイタイム」、もともと親子相互交流療法(PCIT: Parent-Child Interaction Therapy)という2歳 から7歳までの子どもを対象とした心理療法に基づくものです。PCITは、1970年代にシーラ・エイバーグ教授により、親子のコミュニケーションの質を高めて信頼関係を築く目的で 開発され、現在では日本を含め世界中に広がっています。実際のセラピーでは、親子が遊んでいる様子を別室で観察しな がらトランシーバーを使って親にライブ・コーチングをします。このセラピーのいちばん大切なポイントは、好ましくない行動は無視して、いいところをほめること。子どもは承認欲求が満たされ、自己肯定感が育まれていきます。子育てをしていると、ついつい注意ばかりしがちになりますが、なるべく「ほめる」「楽しむ」コミュニケーションを増やして、笑顔の時間をたくさん過ごせたらいいですね。

次回は、近づいてくるホリデー・シーズンに向け、親子共にホリデー・ストレスに負けないための心作りについて紹介します。

※10月28日(土)10:30am~12pm、ピカ ケスクールにて「自己肯定感の高め方」をテーマ にワークショップを開催(料金:$10)。予約・詳細はhirokonagano@gmail.comまで。

[こころ育て]

ワシントン州認定メンタルヘルス・カウンセラー(認定ID:LH60996161)。ニューヨークと東京をベースに、ジャーナリストとして多数の記事を寄稿。東日本大震災をきっかけに2011年にシアトルへ移住し、災害や事故などでトラウマを抱える人々をサポートするためノースウエスト大学院で臨床心理学を専攻。米大手セラピー・エージェンシーで5年間働いた後に独立。現在、マイクロソフト本社の常駐セラピストを務める。hiroko@lifefulcounseling.com