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F、M、J ビザ保持者のオーバーステイに関する変更

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

*同記事は、ワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得し、カンザス州及びワシントン州において弁護士資格を持ち、K&I Lawyersを琴河利恵弁護士と共に創業した五十畑諭弁護士が、在シアトル日本人の読者に向けて解説しているものです。詳細については、K&I Lawyersなど移民法の専門家へお問い合わせください。

F、M、J ビザ保持者のオーバーステイに関する変更

2018年8月9日より、学生ビザ(F-1またはM-1)と交流訪問者ビザ(J-1)保持者、およびその同伴家族(F-2、M-2、J-2)のオーバーステイに関するポリシーが変わります。これは、トランプ大統領の「米国内公共安全の強化」(Enhancing Public Safety in the Interior of the United States)という大統領命令に沿ったポリシーの変更です。

学生ビザ(F-1またはM-1)

F-1ビザは、語学留学を含む学究的な勉学、M-1ビザは、非学術的もしくは職業的な教育または研修を受けることを目的に渡米する外国人に適合するビザです。F-1およびM-1ビザは、一般的に学生ビザと呼ばれます。

交流訪問者ビザ(J-1)

一方、J-1ビザは、交流プログラムへの参加を目的に渡米する外国人に適合するビザです。J-1の適用範囲は広く、住み込みで子どもの世話をするプログラム(オペア)から大学院で研究するためのプログラムまで、いろいろ種類があります。

学生または交流プログラムの参加者は、許可された教育機関や交流プログラムにのみ参加することができます。学業やプログラムが終了したら、出国するか、プログラムを延長、もしくはその他のステータスに変更しなければ、米国での滞在が不法滞在になり得ます。外国人がアメリカに入国する際、パスポートに許可された滞在日が記されます。また、I-94と呼ばれる、以前はパスポートに付けられていた白い紙(ESTA入国の場合は緑の紙)ですが、陸路での入国を例外として、現在はオンラインで管理されています。このI-94にも、許可された滞在日が記録されています。

オーバーステイとは

オーバーステイとは、不法滞在のことで、許可された滞在日を超えてアメリカに滞在した時から始まります。ただし、I-94上の滞在日が、カレンダー上の明確な日にちではなく、「D/S」(Duration of Status)と記載されることがあります。学生の場合は学校に通い続ける限り、J-1の場合はプログラムに参加し続ける限り(ただしJ-1のプログラムには最長期限があるため、それを超えての滞在は不可)、米国内でのステータスは有効という意味です。D/Sの場合は、許可された滞在日がカレンダー日ではないため、いつからオーバーステイになるのかが不明確でした。「移民局が、ステータス違反があったと判断するまで、あるいは、移民法裁判官または移民法控訴委員会(移民法を解釈・適用する上での行政組織上の最高機関)が国外退去を命じるまではオーバーステイにならない」というのが、これまでのポリシーでした。しかし、学生と交流プログラム参加者のオーバーステイに関するポリシーが変更となり、Fビザ、Mビザ、Jビザ保持者は、以下4つの行為が最も早く行われた日からオーバーステイが始まります。1.許可された教育機関やプログラムへの参加を中止した、またはビザの目的に反した行為を行ったその翌日 2.許可された教育機関やプログラム(プラクティカル・トレーニングや帰国準備の猶予期間を含む)を終了した翌日 3.I-94に記載された、許可された滞在期間の最終日の翌日 4.移民法裁判官(immigration judge)またはBoard of Immigration Appeals(移民法控訴委員会)が、国外退去を命じた翌日。

同伴家族ビザ(F-2、M-2、J-2)

2018年8月9日以前に、すでにステータス違反行為が発生しているにも関わらず、現在のポリシーのもとで、まだオーバーステイが始まっていない場合には、8月9日よりオーバーステイが始まります。Fビザ、Mビザ、Jビザ保持者の同伴家族(配偶者、および21歳未満で未婚の子ども)は、F-2、M-2、J-2ビザを保持しています。F-2、M-2、J-2ビザ保持者の許可された滞在日は、自身の、あるいはF-1、M-1、J-1ビザ保持者のステータス違反行為によって終了となり、オーバーステイがスタートします。

オーバーステイは、将来的なビザ申請・入国申請時に大きく影響します。たとえば、180日以上1年未満オーバーステイをした人は、 一度アメリカを出国すると、3年間アメリカに再入国することができません。また、1年以上オーバーステイをした人は、出国後10年間にわたり再入国することができません。なお、この新しいポリシーは、F、M、Jビザ保持者にのみ該当します。その他のビザ保持者のオーバーステイに関するポリシーに変更はありません。

[知っておきたい移民法]

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118