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日系人ゆかりの地めぐり ニーリー・マンションと風呂場

風呂をこよなく愛する日本人。ワシントン州には、日本の風呂文化を反映する歴史的な風呂場が現存します。「堀さんの風呂場」もそのひとつ。かつて農園作業に従事した日系移民の足跡をたどります。

取材・文:小林真依子

シアトルの南に位置するオーバーン市内、グリーン・リバー・バレーの山あいに建てられた木造の小屋に、洗濯場と風呂場がある。通称「堀さんの風呂場」には日本スタイルの深い浴槽に、いすの置かれた体を洗うスペース。なぜ、このような場所が存在するのだろう。

この小屋は歴史的建物の邸宅、ニーリー・マンションの裏にある。グリーン・リバー・バレー一帯の農耕地域は、1900年代前半に多くの日系移民が入植。1894年に完成したニーリー・マンションに1915年から約30年にわたり、日系2家族が借りて暮らした。

深い浴槽の横には体を洗うスペース

「堀さんの風呂場」はそんな日系移民によって、1930年に建てられた。1929年、ニーリー・マンションに妻、5人の子どもたちと共に移り住んだ、広島県出身のシゲイチ・ホリさんだ。農園で働いていたシゲイチさんが、過酷な農作業の疲れを癒すために建設した。

インテリアも当時を再現洗濯機なども全く同じ型を探したという

その後、手つかずで床が抜け、荒れていた風呂場が4年にわたる期間を経て、2016年2月に蘇った。建築方法、レイアウト、インテリアのひとつひとつまで、できる限り当時の姿を再現している。残っている記録や、1939年当時の建物写真、ホリ夫妻の子であるフランク・ホリさん、メアリー・ホリ
さんの当時の記憶などを基にした。外壁の木材は元の建物から使用し、内側から新しい木材で補強。外から釘が見えないような壁の打ち方、日本伝統の「金継ぎ」技術も施されている。インテリアはより当時の姿に近づけるため、今も補修作業が続く。

出稼ぎでやって来た異国の地。少しでも故郷の日本を思い出す場所を持ちたかったのだろう。1日の終わりに湯舟に浸かり、どんな思いをめぐらせていたのだろうか。移民の望郷の念を感じる風呂場は邸宅と共に、夏季土曜ツアーで一般公開中だ。

Neely Mansion and Hori’s Bathhouse
12303 SE. Auburn-Black Diamond Rd., Auburn, WA 98092
開館時間:土曜1pm ~ 4pm ※ 8 月まで。ガーデン・パーティーなど定期イベントあり。
☎ 253-833-9404
www.neelymansion.org

編集スタッフ。金融業界で勤務の後、2016 年より長年の夢であった留学のためシアトルへ。毎日の小さな「オモシロイ」を求めて日々シアトルを探索中。テクノロジーの町にいながらアナログを楽しむ関西人。