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ジャズクラブでライブ体験

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シアトルのジャズ文化を体験しようと、名門ジャズクラブ、ディミトリアス・ジャズアレー(Dimitriou’s Jazz Alley 通称ジャズアレー)を訪れた。

ジャズと言えば、バーなどでBGMとして楽しむイメージを持っていたのだが、ショーが終わるころにはその考えはすっかり覆されていた。ここでは音楽が主役であり、アーティストの作り出す空間は、まるでコンサート会場に足を運んだような感覚を得たからだ。

開演前の談話と食事のひとときを楽しむ

TheKoraBand by Andrew Oliver 2012 場内は広くて天井が高く、2つのフロアを有する客席はステージに向かって配置されており、劇場を思い起こさせる。客席のテーブル上に置かれたキャンドルは幻想的な雰囲気を作り出している。学生3人組で訪れた私たちは、そのお洒落な空間にすっかり気持ちがたかぶっていた。開演30分前に到着したのだが、ステージ前の席はすべて埋まっていたので、ステージ真横のソファのボックス席に陣取った。席は指定ではなく早い者勝ち。従って、ステージ向かって正面の、アーティストの息遣いまで伝わりそうな席はショーの臨場感を存分に楽しみたい時に、ソファ席はデートや特別な時間を演出したい時に、と様々なシチュエーションで選び分けることができる。

ドリンクメニューを見て気が付くのは、ビールやカクテルの種類の豊富さ。私たちはまず乾杯にビール、その後ワインを注文した。膨大なワインリストも用意されているうえ、1階席の後方にあるフルバーでは、メニューにないドリンクでも注文できる。ドリンクの種類については、スタッフに聞けば親切に説明してくれるので、お酒に詳しくない人は相談してみよう。

antonio-sanchez-quartet by Daniel Sheehan 2012 食事は、新鮮な海の幸と、豊富な野菜を使ったノースウエスト料理がウリだ。アペタイザー($11.50~)やエントリー($19.50~)はもちろん、デザートも用意されている。この日は、アペタイザーからカラマリ(Deep Sea Calamari)を、エントリーからはチキンのハーブロースト(Herb Roasted Half-Chicken)を注文。コクのあるキノコソースはジューシーなチキンとの相性が抜群だった。

ショーの直前、目の前のテーブル席で食事をしていた年配の女性とその娘さんの2人組の写真撮影を頼まれた。すでにほとんど食事を終え、開演前から場内の雰囲気を楽しんでいる様子だ。食事のオーダーはショーが始まるとすぐに打ち切られてしまう。ディナーを楽しみながらショーに耳を傾けるスタイルだと勘違いしていた私たちは、焦って注文をすることになってしまった。食事をゆっくり楽しみたい時は、時間に余裕を持って来場したい。

アメリカのジャズ文化を体感

いよいよステージが始まった。この日のアーティスト、アイダホ州出身のジャズシンガーでサックス奏者でもある、カーティス・スタイガースがワイングラスを片手に登場。バンドの演奏と共に彼が、その渋くもどこか甘い声で歌い始めると、一気に心を鷲掴みにされ、演奏に引き込まれていった。

セットリストはラブソングがメイン。前半では体でリズムをとりたくなるようなノリの良い曲、後半はしっとりと聴かせる曲が多く、幅広いレパートリーの楽曲を存分に披露。カーティス自身の曲のみならず、ボブ・ディランの名曲カバー、アコースティックギターでの弾き語り、本人によるサックス演奏など、ライブならではのサプライズな演出でそれぞれの曲に見どころ聴きどころが満載。観客との距離の近さを活かして、ステージと客席とのコミュニケ―ションを図るなど、臨場感あるMCが印象的だった。落ち着いた雰囲気ながら、ショーにグイグイと引き込まれる感覚は非常に心地よく時間の流れを忘れてしまうほど。最後の曲が終わると、観客のスタンディングオベーションで幕を閉じ、アメリカのジャズ文化を肌で体験した90分間だった。

今年の11月に35周年を迎えるジャズアレーは、シアトルのジャズクラブの中でも長い歴史を持ち、シアトル・ウィークリーでベスト・ジャズクラブに選ばれるなど、数々の賞を受賞している。世界中から訪れるミュージシャンの演奏スケジュールは1日から数日で入れ替わる。近年は日本人ミュージシャンが毎年のように訪れるなど、日本ともつながりがあり、年に1度は神戸新開地ジャズヴォーカルクイーンコンテストの優勝者によるお披露目コンサートが開催されている。内部は、2002年に改築され、現在は100席以上を有する。チケット料金は20ドル台から。水曜と木曜の各1公演は、学生は半額、水曜と日曜の各1公演はシニア割引で飲み物と食事が20%割引というお得なサービスがある。

10月7日から8日にかけて、クラシック界の新星ピアニスト、ヘレン・スンが初めてジャズアレーを訪れ、公演を行う予定。大人の落ち着いた雰囲気でカジュアルにジャズを楽しみたい人はもちろん、ジャズに対して何となく敷居が高いというイメージを持っている人も、この機会に訪れてみてはいかがだろうか。

Dimitriou’s Jazz Alley
2033 6th Ave., Seattle, WA 98121
206-441-9729
営業時間 5:30pm~11pm
詳細 www.jazzalley.com
紹介動画:www.seattlechannel.org/videos/video.asp?ID=4010636