Home 特集 森山陽子さんを囲んで座談会...

森山陽子さんを囲んで座談会 ー エンディングノートのすすめ

バイリンガル版エンディングノート『ライフデザインノート』を発行した森山陽子さんを囲んで、エンディングノートを書くメリットや書き方について、ソイソース関係のスタッフがわいわいがやがやと談笑した。出席者は全員日本人女性。

endingNote_0525_2 出席者: 森山陽子(コンサルタント・コーチ/既婚 夫はアメリカ人) A(60代 独身 アメリカに親族なし) B(40代 既婚 2児の母 夫は日本人) C(20代 既婚 夫はアメリカ人) D(独身 親族が米国在住)

とりあえず書いてみる -ライフデザインノート A:これに書き込む情報ってすごい量じゃないですか? コツコツ書くにしてもかなり時間かかると思うんですよね。何を優先したらいいんでしょうか? 森山:「とりあえず、書けるところから書き始めてください」って言ってるんですね。ダイエット器具なんかと一緒で、買ったことに満足しちゃってやらなかったら意味ないんですよ。だから、書けるところからとりあえず始めていく。 B:自分のためというより、遺された家族のためと思うと、強制力がある感じがします。 森山:自分がどうしたいとか、どうしてほしいっていうのと、家族のことを考えると……っていう視点もありますよね。例えば、「こういうお葬式にしてほしい、こういう音楽を使ってほしい、写真は今のじゃなくて40代の頃の遺影がいい」とか「棺に一緒に○○を入れてください」とかね。その一方で、家族のことを考えると、「お金をかけずに一番シンプル、リクエストも何にもない、とりあえず法に触れないように弔ってくれ」っていうのもある。ほかには、例えば○○の保険金に入っているから、こういう状況になったらお金がもらえるはずだから、○○に連絡する」というのも書いておかないと。手続きしないとお金もらえないですからね。 A:Cさんはエンディングノート、ライフデでもっと親のことを知れるきっかけになるのかなって、おっしゃっていました。 C:両親が書いておいてくれるといいなと思いました。私自身に関しては、アメリカに行くと言った時に両親から、「アメリカで死んだら迎えに行けないから、死んだ場合は灰になって戻ってきてね」と言われているんです。夫の家族はクリスチャンなので、代々そのまま埋められるじゃないですか、でも夫はそれは嫌だから自分も灰になる、という話はしています。 森山:アメリカ人て先祖代々のお墓の場所ってないじゃないですか、ご主人はご両親と同じお墓に行くんですか? それともこの辺で?

C:私は仏教ですが、特にこだわりはありませんし、夫も無神論者なので私と同じように考えています。ただ、日本だと一緒のお墓に入るじゃないですか、そうなった時どうなんだろうね、という話をこの座談会の企画が出たときにしました。

森山:離れている日本の親とも、ノートを見ながら、「あそこのページ何て書いたの」とか話ができるといいですよね。震災の時、あるお母さんが、自分が今死んだら子どもに残してあげるものがない、と言っていて。思い出の欄に家に伝わるレシピとか、お父さんお母さんの出会い方とか大切な人へのメッセージなんかを書いておくことで、遺された人が読んでもっと親のことを知れるきっかけになるのかなって、おっしゃっていました。 A:私は一人暮らしで、身寄りはこっちにはいないわけです。自分自身が高齢になってきて、日本にいる姉兄も私よりは上なんで「私に何かあった時に来てください」ということはできない。だからそれをどうしていくのかって自分で考えなければいけない。その手掛かりになるものがあれば助かるなって思いましたね。ましてアメリカに住んでいる場合は身近にいる人や友人がアメリカ人という人も多いので、このライフデザインノートのように、バイリンガルで書けるものがあるのはすごくいいなと思いました。 D:Aさんの場合はもしも何かあったときに気がかりなことってなんですか? A:ネコを飼っているので、ネコのことが一番気がかりですね。それをどうするのかっていうのをやっぱり書き残しておかないといけないな。動物を飼っている人は多かれ少なかれ同じ思いを抱えていると思いますね。それとあと、日本にいる姉兄に迷惑かけたくないな。誰かに連絡はしてもらわないといけないんですけど、それをちょっと考えないと……。 D:交通事故に遭った時なんかは、持ち物の名刺から会社に連絡が行くことも多いでしょうから、会社に連絡網を作っておくと いいかもしれないですね。日本の家族の連絡先を会社に知らせておく。あるいは、緊急連絡先を伝えておいて、そこに連絡してもらうようにするとか。 森山:その場合は、事前に本人の承諾をとっておく必要がありますね。 みんなで情報交換しながら作るといい 森山:ノートを作るのもみんなで情報交換しながらやると楽しいです。話し合うことによって、グループセラピーじゃないけど、共通のおはなしが出来たり、インスパイヤされたり、ということがありますからね。 C:情報交換ができるってすごくいいですよね。知らないことが多いから。他の人の体験談を聞くことで、こうしたらいいんだとか気付いて役に立ちます。 D:私は父が亡くなった時に初めて、遺ったものをどうするかで揉めないように遺書を残しておくことが必要なんだなってわかりました。 森山:年老いた両親は日本にいて自分はアメリカにいるという遠隔介護の環境の場合、なかなか死について話をするとか、お金のことって話するのって戸惑いがありますから、エンディングノートを会話の手段として使っていただくのもいいと思うんですよ。 B:私の父は50代で亡くなったんですけど、病気だったので亡くなる前から「お葬式はここで挙げてほしい」とかって希望は書いておいてくれて、スムーズにいきましたね。 森山:やっぱり書いてもらったほうが、残された方としてはいいですか? B:そうですね。お葬式が終わるまでって本当に事務的じゃないですか。次から次へとやることが出てくる。そんな時に、葬儀屋さんのところで躓いちゃうとすごく大変だと思います。 D:考える暇なんてないですよね。病院から「1 時間で引き取ってください」って言われて、すぐに葬儀屋さんに連絡して引き取ってもらわないといけない。慌てますよね。だから、私の友だちは親の宗教間違えちゃって、葬儀が終わった後に「あ、こういう宗教だったんだ!」っていうのが分かって(笑)。 B:うちも父が長男で代々の墓があるから、母もそこに行くっていうのが分かっていますけど、夫の家族のほうはどうするのかちょっと分からないです。でも明らかにしておかないと、困りますよね。それに「こんなにお金がかかるんだ!」とか。 D:そうそう、お葬式には現金が必要なんですよね。お坊さんにローンってわけにはいかない。葬儀屋さんが「今、お布施を渡してください」と仕切るでしょう? その時に「カードでお願いします」って言えないですよね(笑)。日本だと、亡くなった人名義の銀行口座は凍結されてしまって、その後は手続きのために裁判所に行かないといけない。裁判所の手続きも多分3カ月から半年くらいかかる場合もあるそうです。そもそも病気で入院したりするとお金が必要になるので、キャッシュカードとパスワードをもらって引き出しておいたりと、うちも事前に対策を立てておく必要がありました。エンディングノートにそうした情報が記入してあれば、慌てなくてすみますね。

森山:日本の憲法では、遺言書は手書きでも日付さえ入っていれば効力があるとして認められます。でもアメリカでは手書きは通用しません。弁護士にお金払ってそれなりの手続きをとるのが本来の形のようです。お子さんがいる方は事情がいろいろ違ってきますね。誰かが死ぬと親戚が増えるって言いますが、親戚だと主張する人が出てくるので、自分の子どもにきちんと財産が行くように弁護士を雇って書いておく必要があります。遺言書を書く時には資産も算出しなきゃいけないんですね。資産が大きかったらこうする、少なかったらこうする、と提案してくれます。そのためにも、ライフデザインノートに資産の情報を書いておけば、弁護士のところに持って行くだけでいいじゃないですか。ワシントン州にも日本人の弁護士さんがいらっしゃいます。

D:出来ていれば話しやすいですよね、頭の中もまとまっているし。「代理人は?」って聞かれた時に、妹の住所とか全部ここに書いてあるから、いちいち何かの書類を引き出してファイルに入れて持っていかなくても、これ一冊持って行けばいいんですものね。

森山:メディカルインフォメーションに関しては、「書いたらそのページをコピーして持ち歩いてください」って言っているんです。自分が医療関係のところに運ばれたときに渡せるように。知らないところであっても、かかりつけのお医者さんは○○先生で、こういう既往症があって、この薬がありますよって全部書かれてるわけですから、そういう使い方もできると思うんですね。

D:父が、亡くなる少し前に階段から落ちて救急車で運ばれたことがあるんです。その時、一緒に救急車に乗ったんですけど、救急隊の方が常備している薬のこととか聞くんですよね。でも本人は頭打ってるから答えられる状態ではなくて、私も何を飲ませてるのかが全然わからなくて。あの時にこういうものがあったらそれを渡すだけですんだのに、と思いますね。

森山:薬の名前と容量、処方開始日、投薬量、回数、何のための薬か、あと処方してくれた先生のお名前と、やめた薬があればやめた理由も書いておくといいですね。すべては書ききれないと思いますけど、何かあった時の連絡先を考えるうえでもこれが一冊あれば助かります。 葬儀のところはあえて漠然とさせています。というのは、宗教によっていろいろと違いますから。友人にキリスト教徒とイスラム教徒のカップルがいますが、イスラム教は土に還らないといけないので旦那さんが先に死んだら旦那さん方式で、奥さんが死んだら奥さん方式でとなっているそうです。日本ではお墓参りの習慣がありますよね。だから供養のための法事という感覚があるけど、例えばキリスト教にはないから、誰に頼むとか書いておく。

A:ガイドになっていますね。考えなくてもこれに沿って書いていけばいい。何もないところからだと、どこから手をつけていいのかわからないですが。

森山:書いているうちにいろんなことが出てくると思うんですよ。そこからですよね。取りあえずどこからでもいいから書き始める。そうするうちに、これ考えなきゃ、あれ考えなきゃって頭のどこかで考えるようになります。これを書き始めることで、家族間の会話が増えると思いますよ。Cさんがおっしゃったように、葬儀のことについて夫と今まで話す機会なかったけれど、これを聞いたことによって、「あ、話しておかなきゃな」って。だからこれは、ライフデザインノートに限らず、日本で売っているたくさんの種類のエンデイングノートが1冊あることによって、離れている親とのコミュニケーションも増えると思いますね。

D:離れた兄弟姉妹ともですよね。これ見たらなんかちょっと妹の子どものことが気になります。どうするのかしら? 妹たちが突然交通事故とかで亡くなったら、私のところに来るのかしらとか思っちゃいますね。だから、ちゃんと書いといてもらわないと。私の意思も聞いてねって。これでまた会話が一つ増えました。

B:すごくいいものとは思いつつも、やっぱり「大変だなー」っていうのがある。でも、支払とか保険とか年金とか、全部夫任せになっているので、彼にはぜひともやってほしいですね(笑)。日記の3日坊主じゃないけれど、どうやって書くかっていうのが問題かなって思いました。

森山:セミナーに来てください。おしりたたきます(笑)。