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特集 シアトルで日本を支える人たち

シアトルで活躍する日本人や日本企業を、陰ながらサポートしてくれる人たちがいます。今回は在シアトル日本国総領事館の小西領事、シアトル日本商工会の桂田会長にお話を聞きました。

取材・文:小村侑子、寺島伶菜

 

  • 在シアトル日本国総領事館 小西隆太郎領事
  • シアトル日本商工会(春秋会)会長
    日本航空株式会社(JAL)米州技術・品質保証部部長 桂田健さん

 

桂田健さん

かつらだ たけし
■1983年、日本航空株式会社(JAL)に入社。主にジェットエンジンの整備業務に携わり、2014年からJAL米州技術・品質保証部部長としてシアトルで勤務するかたわら、2016年度と2017年度のシアトル日本商工会会長職を務める。根っからの飛行機マニア。

シアトル日本商工会(春秋会)の会長として、2年目の任期を迎える桂田さん。シアトルに進出する日本企業を陰ながらサポートする「裏」の顔と、ご自身も駐在員として活躍されている「表」の顔に迫った。

「人間として何が正しいかで判断する」

教育・交流・経済文化の3分野

私たちシアトル日本商工会の使命は、商工会会員をはじめとしたシアトルに住む日本人の皆さんの生活をサポートすることです。主な活動は「教育部会」「交流部会」「経済文化部会」の3つに分かれており、それらをまとめて具体的な方針を役員の皆さんにお示しするのが、会長としての私の役割です。
商工会はシアトル日本語補習学校の運営母体であり、教育部会は学校運営委員会を通じて補習校のサポートを行い、同校の入学式や卒業式、運動会などのイベントにも参加します。日本とアメリカの情報交換のために、補習校の校舎をお借りしているサマミッシュハイスクールの先生方を日本へ派遣するプログラムもあります。交流部会では、桜祭やジャパンフェアなどに毎年参加して、地域の方との交流の機会を利用して日本文化を紹介するブースを出しています。経済文化部会ではイベントやセミナーを開催しています。世の中の情勢を知り、それが私たち日系企業にどのような影響があるのかを、会員だけでなく一般の方も交えて話し合います。今年は大統領が代わったので、トランプ政権に関するセミナーを開きたいですね。

総領事館との密接な関係

在シアトル日本国総領事館と商工会はいわば「車の両輪」のような関係なんです。私たちの共通の目的は「日本人の皆さんのために」。いつも密に連絡を取り合い、気兼ねなく意見交換をしています。「運転免許試験の一部相互免除」はその中のいい例ですね。総領事館との話し合いを経て、まずはワシントン州に住む日本人が相互免除を必要としていることを証明するために、商工会の会員に向けてアンケートを行いました。それを元に取りまとめた要望書を昨年1月に総領事館に提出し、そこから新制度への動きが始まったんです。

地元企業とのパートナー関係

商工会としてシアトルの日本企業をサポートする一方で、私もひとりの駐在員です。エバレットにあるボーイング工場で、ボーイングの社員と一緒になって飛行機の品質管理をしています。工場内にあるJALのオフィスには、私を含めた5人のスタッフがいます。数あるエアラインの中でも、こうして工場内オフィスに2人以上の駐在員を常に置く会社は少ないです。今日は完成に近い機体の客室を細かくチェックしています。テーブルや座席など、動かせるものは全て動かして。こうして製造のプロセス毎に自分たちの目で検査をして、本当にお客様が安心できる飛行機を受け取っているんです。
ボーイングを信頼していないと思われるかもしれませんが、決してそうではありません。私たちがエアラインとして持っている知識や経験を提供し、メーカーとユーザーの立場でお互いにフィードバックして補完し合いながら、より良い製品を作ろうとしているんです。JALもボーイングも最終目的は同じ、お客様に安心で快適な旅を提供することです。

みんなが幸せになる道を選びたい

JALの社員のポケットには「JALフィロソフィー」と呼ばれる小さな冊子が入っています。2010年の経営破綻後に新しくJALの会長になられたのが、京セラ創業者の稲盛和夫さんです。稲盛さんの指導の元、我々が行った改革のひとつが「JALフィロソフィー」作成で、JALの社員が持つべき人生哲学がまとめてあります。
私が好きなのは「人間として何が正しいかで判断する」というところ。例えば「JAL のためにはなるけれど、ボーイングのためにはならない」という状況の時、果たしてどうすればいいのか。私は、目先ではJALのためにはならないかもしれないけれど、長い目で見ればみんなが幸せになれる方を選びたいと思っています。これは商工会にも同じことが言えます。

▲ 総領事公邸でのイベントにてJALチームの皆さんと小西さんでパシャリ

商工会の職務は、本業のかたわらで行うボランティアです。この1年の会長としての活動を振り返った時に、自分の働きが一体誰のためになっていたのかを冷静に考えてみると、私にもっとできることがあるのではないかと思いました。そこで次年度の会長としての続投を決めたんです。今後はシアトルにいる日本人の方がより生活しやすい環境を作っていきたいです。

*シアトル日本商工会(春秋会)ってどんなところ?*

シアトルの事業者が会員となって、お互いの事業の発展や地域への貢献のために総合的な活動を行う団体。会員の対象は主に日本法人のシアトル支店や出張所、駐在員事務所など。他にも、準会員、遠隔地会員及び個人会員もあり。現在は約100社が登録している。

在シアトル日本商工会(春秋会)
Japan Business Association of Seattle( Shunju Club)
919 124th Ave. NE, #207, Bellevue, WA 98005
☎425-679-5120
www.jbaseattle.org

毎年4月に行います。私たち駐在員のほとんどは4月に赴任してくるため、新しい生活を始められる方に向けた情報の場として、ゲストスピーカーを招き、医療・保健事情や安全対策など、アメリカに来て最初に気をつけるべきことを紹介しています。他にも経済セミナーなど、様々なジャンルのセミナーを開催しています。

4月下旬にシアトルセンターで開催される「桜祭」は、40年以上続くシアトル地区最大の日本の伝統文化や芸能を紹介するイベントです。商工会もブースを出しており、忍者の紹介やけん玉体験など、日本人だけでなく現地の人にも楽しんでもらえる企画を出展しています。会員企業のパンフレットを置くなど、アメリカ社会へのアピールも忘れませんよ。

 

毎年9月に開催されていた「秋祭り」が、2016年から「ジャパンフェア」になりました。私たち商工会も蚤の市のブースを設けています。会員をはじめ色々な方からのご支援やご寄付を募り、半年かけて準備します。日本の伝統的な和食器や電気製品、おもちゃが人気です。
(写真は2015年「秋祭り」の際のもの)

 

ワシントン州日米協会と共催で、毎年7月に行ってます。BBQをしながら色んな人と話す、まさに交流の場ですね。初対面の方同士でも会話が弾むように、ネームタグに出身地や趣味を書くなどの工夫をしています。カジュアルなBBQなので、ご家族で一緒に参加できます。